夜明け前の図書館は、静寂に包まれていた。

「先輩、本当にここに入ってもいいんですか」と、美咲は小声で尋ねた。彼女の手には、古びた鍵が握られていた。

「大丈夫だ。館長から許可はもらっている」と、拓海は答えた。「それより、例の本を探すぞ。朝が来る前に」

二人は書架の間を静かに歩いた。窓の外では、東の空がわずかに白み始めていた。埃の匂いと、古い紙の香りが漂う。美咲は足を止め、一冊の本に手を伸ばした。

「先輩……これ、見てください。表紙に何も書いてありません」

拓海が振り返った瞬間、図書館の奥で、何かが落ちる音がした。
